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Awayの洗礼・・・なでしこに中国流アウェーの洗礼! 五輪アジア最終予選、現地プレビュー。
Number Web 8月31日(水)12時4分配信 ロンドン五輪女子アジア最終予選に臨むなでしこジャパンは8月28日に中国・済南に到着した。 翌29日、直前調整を行うなでしこのために主催者側が用意していた練習場は、スタジアムに併設されているサブグラウンド。しかしこれがとんでもないシロモノだった。 サッカーの試合やトレーニングが行われない時は、ゴルフの打ちっぱなし練習場としても使用されているのである。 片方のゴール裏に2階建ての打席がしつらえられていて、反対側のゴール裏にはそれなりの高さのネットが設置されている。ただし、ゴルフ練習場として見た場合は中途半端な大きさだ。距離は最大でピッチの縦方向+周囲のトラック分しかないし、両タッチライン側や天井にまでネットが張り巡らされているわけでもないから、せいぜいショートアイアンを使ってのアプローチを打つぐらいしかできない。ということは、ほとんどの打球がピッチの芝の上に落ちるわけだ。 官製のスポーツ複合施設内にあるサッカーグラウンドを打ちっぱなし練習場として使っていること自体が驚きだし、五輪出場をかけた大事な大会の練習場として、そうしたグラウンドを他国の代表チームに提供していることはさらに信じられない。 芝の下の土が打球のせいでデコボコになっているかもしれないし、落ちたボールをすべて取り除けている保証はない。穴に足を取られ、あるいはまだ残っていたボールを踏んで足を痛めても何の不思議もないグラウンドなのだ。仮に徹底してボール除去を済ませていたとしても、選手としてはもしもの不安があって全力疾走を躊躇してしまうのではないか。 ■ゴルフの打ちっぱなし練習場に、無情に降り注ぐ雨、雨、雨……。 男子代表が中東でアウェー戦を行う際など、練習会場に釘が落ちていた等の話をよく聞くが、ゴルフの打ちっぱなしとはまた意外な方向からの「アウェーの洗礼」である。 だから練習開始前、ポールを立てたりコーンを置いたりといった準備と並行して、なでしこジャパンの男性スタッフは入念にピッチを確認していた。 歩いた感触はどうか、芝深くにボールが隠れていないか。 やがて佐々木監督が、ピッチの中からボールを1個つまみ上げた……。 そしてやっと練習を開始しようかという段になって、小ぶりだった雨が突然激しくなり、やがて雷雨に変わった。そのままいくら待ってもやむ気配がなく、初日の現地練習は中止となったのだった。 この先の済南周辺の天候を調べてみても、雨模様の日が続く予報になっている。するとどんな状況が予想されそうかという観点から、目前に迫った五輪予選をまず展望していきたい。 一番恐いのは、日本の持ち味であるテクニックが無力化されることだ。 ■なでしこの“テクニック”がぬかるみの中に消える!? ぬかるみ、水が浮いたピッチでの試合は、細かなステップや精緻なトラップ、ピンポイントのパスといったお家芸をなかなか発揮できない。かといって大きな展開をしようにも、なでしこにはキック力のある選手が不足しているし、ロングパスで組み立てるサッカーにも慣れていない。 一方、重馬場で力を発揮するのが、パワーのある選手を揃えたチーム、つまりオーストラリア、韓国、北朝鮮、中国といった国々である。長いボールをスペースに放り込み、遠目の距離からシュートを放ち、馬力のあるドリブルで敵を蹴散らしと、割り切った試合ができる。 つまり、日本とタイ以外のすべての出場国が、足元の悪いピッチをものともしないのだ。 いやむしろ、世界一になったなでしこの武器が奪われるのだから、悪天候は望むところかもしれない。そして唯一のお仲間であるタイにしても、乾いたピッチほど技術の差がつかない条件は大歓迎だろう。僅差での敗戦に持ち込めれば、それはタイにとって勝利に等しいし、逆に日本にとっては総得点や得失点差の面で大きな痛手だ。 ■晴れたら晴れたで、圧倒的なスピードを誇る敵と戦う難局が待つ。 文字通り、不穏な雲行きになっている済南ではある。 ただし中国のスタジアムは、素晴らしい水はけのピッチを持っている場合がある。北京五輪グループリーグでのノルウェー戦を現地で観戦した日本人はあまり多くないかもしれないが、あの時の上海は試合開始30分前まで激しい雷雨が降り続いていた。しかしいざ試合が始まってみると、多少の水しぶきこそ上がっていたもののピッチはまるでぬかるんでおらず、きれいにボールが走ったのだ。まるで、ホーム戦ではパスがよく回るようにあえてピッチに水をまくバルセロナの試合のように。 五輪予選の試合は済南市内の2カ所で行われるが、どちらの会場もあの上海体育場のようなピッチであることを期待したい。 が、そうなると――あるいは好天に恵まれると――今度はスピードという厄介な問題と直面しなければならない。 W杯のイングランド戦でもアメリカ戦でも、日本は敵のロングボール一本で快足FWにDFの裏を取られて失点した。また8月19日に行われたなでしこジャパン対なでしこリーグ選抜のチャリティーマッチでは、後半にリーグ選抜がスピードのあるアタッカーを投入すると、なでしこ守備陣をパニックに陥れた。 今回の五輪予選の対戦国にも、同タイプの選手は少なからずいる。 ■爆発的スピードを誇る敵FWと、気になる審判の噂とは? 例えばタイのFW、ピトサマイ・ソーンサイ。昨年11月のアジア大会で日本と対戦した時には、日本の左サイドをカウンターで脅かした。 オーストラリアは看板FWのリサ・デバンナが世界トップクラスのスピードを持っているし、W杯をけがで欠場し今大会で代表復帰したベテランのサラ・ウォルシュも、爆発的な瞬発力で一気に相手を置き去りにできるプレーヤーだ。また、本来FWでありながらW杯では右DFに起用され、効果的なオーバーラップを見せた16歳のケイトリン・フォードは、ドイツ大会のベスト・ヤングプレーヤー賞に輝いている。 北朝鮮はドーピング問題で5人の主力選手にFIFAから出場停止処分が下ったが、16歳のキム・スギョンは健在だ。右MFの彼女は、切れ味鋭いドリブルが身上。W杯初戦のアメリカ戦では百戦錬磨の相手DFを完全に翻弄し、再三決定機を作り出していた。 最後に、未確認だが気になる情報をひとつ。ある出場国(日本ではない)のスタッフによれば、今大会の審判は全員UEFAから招集されているという噂があるのだという。北朝鮮以外の出場国には、それぞれ国際的に評価されているレフェリーがいる。しかし総当りのリーグ戦のため、大会終盤に近づくにつれ自国を間接的に有利にするためのジャッジ云々と、詮索をされかねない。そうした余計なトラブルを避けるため、FIFAが(この五輪予選はAFC管轄ではないのだ)が前もって手を打ったということはあり得るだろう。 実際、'06年の女子アジア杯準決勝でUEFAからの審判が笛を吹いた前例もある。ただこの時は中国vs.北朝鮮戦での微妙な笛を巡り、激高した北朝鮮選手が試合後にイタリア人主審を追いまわして蹴り上げるという前代未聞の事件が起こったのだが……波瀾の大会にならないよう、祈るばかりだ。 ロンドン五輪アジア最終予選の初戦は9月1日木曜日のタイ戦。その後、3日・韓国戦、5日・オーストラリア戦、8日・北朝鮮戦、11日・中国戦と、10日間ほどで5試合というサッカーとしては異常なスケジュールをこなすことになる。 降っても晴れても予断を許さない。そんな五輪アジア予選がいよいよ始まろうとしている。 (「なでしこジャパン特報」河崎三行 = 文) 厳しい闘い・・・ でもそれを乗り越えてこそなでしこの真価が問われる! |
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